心理学メンタルコーチング・武士道に学ぶ5つの軸と8つの習慣

子どもの未来が怖い夜に読む:プラネタリーウエルビーイングの謎

目次

【第1章】なぜ今、この悩みが増えているのか

朝、天気予報の「異常」を聞いただけで。
心のどこかが、ふっと重くなる日があります。

仕事の予定は詰まっているのに。
頭の片隅では「地球の方が先に限界かも」と思う。

家では、子どもが無邪気に聞いてくる。
「ねえ、将来も夏ってこんなに暑いの?」と。

その瞬間、親の心は静かに凍ります。
答えがない問いを、受け取ってしまうからです。

実際、相談の言葉はもう出ています。
「気候変動がつらくて、希望が持てない」と。
「怖くて眠れない」と訴える投稿も昔からあります。
「子どもを産んだことが申し訳ない」とまで書かれることも。

ここで、先に結論を言わせてください。
それは、あなたが弱いからではありません。

むしろ逆で、あなたの感受性が働いています。
“危機”を危機として受け取れる心が、まだ生きている。

この悩みが増えた背景には、二つの波があります。
ひとつは「現実の変化」、もうひとつは「情報の濃度」です。

極端な暑さや災害は、体感として迫ってきます。
同時にSNSは、危機を毎日「現在形」にしてしまう。

さらに厄介なのは、まじめな人ほど苦しくなる点です。
エアコンも使う、物も買う、ゴミも出る。
生きるための行為が、罪悪感に変わってしまう。

この状態は近年「気候不安(エコ不安)」とも呼ばれます。
正式な病名ではない一方で、眠れない・無力感などが語られます。

そして今、ここに“新しい統合の言葉”が出てきました。
それが、あなたの挙げたプラネタリー・ウェルビーイングです。

フィンランドのユヴァスキュラ大学(University of Jyväskylä)では、
Teea Kortetmäki(テーア・コルテトマキ)らが、
地球システムの健全性と、生命のウェルビーイングを結ぶ概念を提案しました。

またスペインのポンペウ・ファブラ大学(Pompeu Fabra University)では、
Josep M. Antó(ジョセップ・M・アント)らが中心となり、
2018年に「Planetary Wellbeing Initiative」を立ち上げています。

つまり、あなたの苦しさは「個人の弱さ」ではなく。
世界が“個人の幸福”を「地球の条件」と結び直し始めたサインです。

ここが今日いちばん大事な再定義です。
あなたの不安は、あなたを責めるためではなく、守るためにある。

そして、このブログの核心フレーズを置いておきます。
「地球を守る」は、まず“自分を責めない呼吸”から始まる。

【第2章】心理学的に何が起きているのか

プラネタリー・ウェルビーイングは、
「自分の幸福」と「地球の健全性」を、
同じカルテで扱おうとする発想です。

フィンランドのユヴァスキュラ大学で、
Teea Kortetmäki(環境倫理・サステナビリティ研究)らは、
地球システムの健全性が保たれて初めて、
生物(人間を含む)が“よく生きる機会”を持つと定義しました。

ここから先は、あなたの心の中で何が起きるか。
「症状」ではなく「仕組み」として見ていきます。


 1)脳の警報器が鳴り続ける:エコ不安(気候不安)

エコ不安は、病名というより反応です。
APA(米国心理学会)と ecoAmerica の報告では、
エコ不安を「環境破滅への慢性的な恐れ」と表現しています。

危険を察知する脳の機能が、
“止めづらいスケールの脅威”に反応すると、
警報だけが長く鳴り続けやすいのです。

さらにやっかいなのは、
不安に「悲しみ」や「罪悪感」が混ざる点です。
だから、疲れ方がじわじわ深くなります。


2)「知っているのに出来ない」の痛み:認知的不協和

頭では「環境に良い選択」をしたい。
でも現実は、便利さも必要になります。

このズレが生む不快感を、
Leon Festinger(社会心理学、当時の研究の流れ)らは、
認知的不協和として説明しました。

高校生向けに一言で言うなら、
「心の中の矛盾が、胸のザワつきになる現象」です。

このザワつきを消すために、
人は無意識に二つの方向へ動きます。
行動を変えるか、解釈を変えるか、です。

だからこそ、ここで大切なのは、
「根性で矛盾を潰す」ではありません。
矛盾が出る設計の世界に住んでいると認めることです。


3)大きすぎる問題が奪うもの:学習性無力感

気候の問題は、スケールが巨大です。
個人の努力が、霞む感じがしてしまう。

この「何をしても変わらない感覚」を、
Martin E. P. Seligman(ペンシルベニア大学)らは、
学習性無力感の研究で示しました。

実験では、逃れられない状況を経験すると、
後で逃げ道があっても、試さなくなることがある。
その傾向が報告されています。

高校生向けに言い換えるなら、
「できないと学習すると、できる場面でも動けない」です。

エコ不安が重くなる時、
あなたの意志が弱いのではなく、
“無力感が学習されかけている”だけかもしれません。


4)希望を作る技術:意味づけのコーピング

ここで希望の側の研究です。
Maria Ojala(スウェーデン、オレブロ大学)らは、
子どもや若者の気候変動への向き合い方を調べています。

彼女の研究では、対処には複数の型があり、
「問題に取り組む」だけでなく、
意味づけ(meaning-focused coping)が出てきます。

意味づけとは、現実を否定することではありません。
「この不安は、何を守りたい気持ちなのか」を、
言葉にして持ち直す方法です。

不安をゼロにするより先に、
不安と一緒に立てる形へ、整えていく。
それが“折れない希望”の作り方になります。


5)続けられる行動の条件:自己決定理論

「行動しよう」と思っても、続かない。
それは意志の問題に見えて、環境の問題です。

Richard M. Ryan と Edward L. Deci は、
自己決定理論(Self-Determination Theory)で、
心が健やかに動く条件を整理しました。

核になる欲求は三つです。
自分で選べる(自律性)、できる(有能感)、つながる(関係性)。

だからプラネタリー・ウェルビーイングは、
「地球のために我慢しろ」では成り立ちません。
自律性と有能感が保てる小さな選択が要ります。


 6)「私ひとり」を超える力:自己効力感と集合的効力感

Albert Bandura(スタンフォード大学)は、
人が動けるかどうかは「できそう感」に左右されると示しました。

これが自己効力感です。
そして彼は、集団にも同じ力があると述べ、
集合的効力感(collective efficacy)を論じています。

ここがプラネタリー領域の急所です。
地球規模の問題は、個人戦では勝てない。
だから「一緒にやれる感覚」自体が、心の資源になります。


まとめ:あなたの心は「正常に反応している」

エコ不安は、あなたの弱さの証明ではありません。
世界の危機に、心がちゃんと反応している証拠です。

矛盾で揺れるのも、無力感が出るのも自然です。
だから必要なのは、正しさの競争ではなく、
“続けられる形”への設計替えです。

【第3章】最新研究(論文)紹介

ここでは「理念」ではなく、
地球と心を同時に整える“やり方”の研究を、
新しい順に3本だけ選びました。

(※投稿日が明記されているものを優先)


1)自然と“つながり直す”と、心と行動が同時に動く

Salonen, K. ほか(2025)|Tampere University(フィンランド)
Act with Nature Intervention Supporting Planetary Well-Being

この研究は、
「気候危機で心が疲れる」ことを前提にしています。
その上で、心の回復と環境配慮行動を、
同じプログラムで支える設計を提示します。

  • 12週間の自然ベース介入(AWN)を開発。

  • 仕組みは「自然とのつながり」「対処の効率化」。

  • 週1の集団型と、柔軟な個別型の2形式を用意。

  • ねらいは、メンタルの向上+環境行動の増加

ここが大事な再定義です。
「環境のために自分を削る」ではなく、
自分を整えるほど、環境行動も増える設計です。


2)“3つの良かったこと”を自然でやると、つながりが増える

Passmore, H-A. ほか(2025/10/05)|Concordia University of Edmonton ほか
Enhancing personal and planetary wellbeing…(3GT vs 3GTiN)

ポジティブ心理の定番「Three Good Things」を、
“自然版”にした比較研究です。

  • 事前登録(preregistered)の比較実験。

  • 参加者はN=330で、1週間の毎日記録。

  • 自然版(3GTiN)は、通常版と同程度に幸福感を上げた。

  • 追加で、超越的なつながりelevationが伸びた。

  • 自然へのつながりが、環境配慮意図の強い予測因子に。

  • エコ不安は条件間で有意差が出なかった。

ここでの学びは静かに効きます。
不安を叩き消すより、
つながりを増やすと、回復が起きるという視点です。


3)子どもの「自然リテラシー」を育てると、健康と“守る心”が育つ

Barrette, M. Y. ほか(2025/02/26)|University of Victoria(カナダ)
Fostering early adolescent health and planetary well-being…(Delphi study)

これは、10〜14歳の時期に、
自然への関わりが減る現実を背景にしています。
そこで「自然に親しむ力」を、
測れて育てられる枠組みに整理しました。

  • 国際的な専門家パネルでe-Delphiを実施。

  • 3ラウンドで合意した要素は7つ。

  • 知識・技能(competence)・自信・動機づけ。

  • 経験・つながり(connection)・スチュワードシップ。

  • 目的は、思春期の健康と、自然を守る態度の両立。

親の読者にとっては、救いがあります。
「正しいことを教え込む」より先に、
自然と仲良くなる土台を作れる、という提案です。


3本を1本の線でつなぐと

3つの研究に共通するのは、
「罪悪感のムチ」では人は続かない、という前提です。

代わりに鍵になるのは、
自然とのつながり/対処/育てる枠組みです。

プラネタリー・ウェルビーイングは、
“正しさ”の旗ではなく、
続けられる優しさの設計学なのかもしれません。

 

【第4章】東洋哲学はどう捉えていたか(意味)

プラネタリー・ウェルビーイングの芯は、
「人の幸福は、地球の条件に支えられている」です。

この発想は、実は新しいようで古いです。
東洋思想は昔から「分けない」で考えてきました。

ここでは押し付けず、現代語に翻訳します。
“正しさ”ではなく、“続けられる意味”へ寄せます。


1)仏教の「縁起」:あなたの幸せは、条件でできている

仏教の中心に、縁起(dependent origination)があります。
「これがあるから、あれがある」という条件の見方です。

この視点で見ると、罪悪感は少し変質します。
「私が悪い」ではなく、「条件がきつい」になります。

エコ不安も同じです。
心が壊れたのではなく、条件の圧が増えただけ。

プラネタリー・ウェルビーイングは、
縁起を“地球規模”に拡張した言葉、とも言えます。

だから最初にやるべきことは、断罪ではありません。
条件を一段、やさしくすることです。


2)仏教の「中道」:完璧主義を降ろす、第三の道

環境の話は、極端に振れやすいです。
「全部やる」か「もう無理」の二択になりがちです。

仏教は、二極の間を歩く道を中道と呼びました。
快楽への逃避でも、自己罰でもない真ん中です。

現代語にすると、こうなります。
“できる範囲で、折れない形にする”です。

中道は、努力を弱める教えではありません。
継続のために、力みを抜く知恵です。


3)老子の「知足者富」:削るのではなく、「足る」を取り戻す

老子『道徳経』33章に、短い刃があります。
「知足者富(足るを知る者は富む)」

これは「我慢しろ」ではありません。
“足りない前提”に操られる心から自由になる話です。

環境配慮が苦しい時は、
行動が罰になっていることが多いです。

でも「足る」が戻ると、行動は罰ではなくなります。
暮らしを軽くし、心を軽くする選択へ変わります。

プラネタリー・ウェルビーイングの実装は、
まず足る感覚を回復するところから始まります。


4)易の「窮則変」:大きな正解より、小さな変化を続ける

『易経』繋辞下には、こうあります。
「易窮則変、変則通、通則久」

行き詰まったら、変える。
変えたら、通る。
通ったら、長く続く。

ここで言う「変える」は革命ではありません。
小さく試して、息が続く方を採用することです。

これは、学習性無力感の反対側に立つ作法です。
一気に世界を救わなくていい。
今日の条件を、少しだけ動かせばいい。


5)禅の「日日是好日」:現実逃避ではなく、今日を丁寧に置く

禅語の「日日是好日」は誤解されがちです。
「毎日ハッピー」という意味ではありません。

雲門文偃の公案として『碧巌録』第6則に見られます。
今日の苦さも含めて、今日の一手を置く。
その態度が「好日」を作る、という含みです。

気候の不安は、未来に心が攫われる病でもあります。
だから禅は、呼吸の場所を“今日”へ戻します。


ここで、いちど「一球入魂」を現代語にし直します

一球入魂の「球」は、ボールでもあります。
そして、地球の「球」でもあります。

だからこのテーマは、根性論ではなく。
“一球=一つの意志をもった行為”が、世界と自分を守る話しです。

自分を削って地球を守ると、長くは続きません。
地球を口実に自分を責めると、心が先に折れます。

東洋思想がくれる再定義は、静かです。
守るとは、つながりを思い出すこと

 

【第5章】まとめ(希望の余韻)

ここまで読んだあなたは、
もう「個人の幸福」だけを見ていません。

同時に「地球」だけを見て、
自分を切り捨てもしていません。

この中間に立てたこと自体が、
プラネタリー・ウェルビーイングの第一歩です。

エコ不安は、消す対象ではありません。
守りたいものがある人の、まっとうな反応です。

そして研究が示す方向は、一貫しています。
罪悪感で叩くより、つながりを増やす方が続く。

ここで、今日の結論を一文にします。
「地球を守る」は、まず“自分を責めない呼吸”から始まる。


5分以内でできる行動(道具不要)

① 30秒:「環境の不安」を“守りたいもの”に翻訳する

今ある不安を、否定しません。
紙もスマホも要らないです。

心の中で、こう言い換えます。
「私は___を守りたいから、揺れている」

家族でも、健康でも、未来でもいい。
不安が「敵」から「味方」に変わる入口です。
(意味づけのコーピングの方向に寄せる一手です。)

② 2分:「自然版・3つの良かったこと」を1つだけやる

今日、自然に関係する“良かったこと”を1つ。
たとえば、空の色、風、木の匂い、鳥の声。

一つでいい。
「見つけた自分」を、静かに認めます。

自然とのつながりを増やす介入は、
幸福感やつながり感の増加と結びついて研究されています。

③ 2分:「中道の選択」を1つだけ決める

完璧にやろうとすると、折れます。
だから中道でいきます。

次の24時間で、できる範囲を一つだけ。
・レジ袋を断る、ではなく「一回だけ断る」
・節電、ではなく「一つの部屋だけ早めに消す」
・分別、ではなく「今日はペットボトルだけ丁寧に」

小さすぎるくらいが、長く続く。
継続が、心を守り、地球にも触れていきます。

④ 30秒:「ひとり戦」をやめる言葉を持つ

地球規模は、個人戦にすると折れます。
だから、言葉で先に協力へ寄せます。

「私は全部は背負わない。
でも、できる一手は置く」

この一文は、無力感を学習させないための楔です。


静かな結び

あなたが守りたいのは、地球だけではない。
あなた自身の暮らしの温度も、同時に守りたい。

その両方を守ろうとして揺れるのは、
むしろ、誠実さの形です。

だから急がなくていい。
一気に世界を変えなくていい。

今日の呼吸が少し深くなる方へ、
小さな一手を置けばいい。

それが、未来に対するいちばん現実的な優しさです。

「守るとは、つながりを思い出すこと。」

あなたの不安が指している「守りたいもの」は、
本当は“誰のどんな日常”でしょうか。


本記事は、最新の心理学的知見と東洋哲学(禅・武士道)を統合した
『Psycho-Bushido』スタイルで超解釈をもって執筆されています。

関連記事

  1. ◆コミニケーションとストローク法

  2. ◆準拠集団

  3. ◆エメットの法則

  4. 星空のおそば屋さん

    自尊心の深層:心理学と脳科学から解明する

  5. デジタル断食(デジタルデトックス)で心が軽くなる|情報の波から離れて乗…

  6. ◆リズム感と記憶力の強化

  7. “学習と行動変容:オペラント条件の威力”

  8. 自己効力感:内なる力を引き出す鍵