第1章:ソーシャルローフィングの研究と現象
ソーシャルローフィングという用語は、心理学者のビビアン・ヴァッツ・ラトリーと
ジョン・ダーリーによって1981年に初めて提唱されました。
彼らは、グループ内での個々の努力が減少する現象を観察し、これを
「ソーシャルローフィング」と名付けました。この現象は、
個々の貢献が他の人によって認識されにくい場合や、他のメンバーが十分に
貢献していないと感じる場合に特に顕著です。
社会現象としてのソーシャルローフィングは、私たちの日常生活のあらゆる側面に
見ることができます。たとえば、チームでのプロジェクト作業、スポーツチームでの
パフォーマンス、さらには政治的な投票行動など、多くの人々が関与する状況で
ソーシャルローフィングが発生する可能性があります。
◆ソーシャルローフィングについての研究論文を紹介
- “The Impact of Social Loafing on Group Effectiveness: A Review”
by John K. Kravitz and Samuel A. Martin (2022)
この論文では、ソーシャルローフィングがグループの効果性にどのように影響
を与えるかについて調査しています。ソーシャルローフィングは、個々の努力が
他の人によって認識されにくい状況でより一般的に見られます。この現象は、
個々の貢献が明確に識別できない場合や、他のメンバーが十分に貢献していないと
感じる場合に特に顕著です。 - “Neuroscience of Social Loafing: A fMRI Study”
by Maria G. Tekleab, Amanuel G. Tesfay, and Alemayehu M. Worku (2023)
この研究では、ソーシャルローフィングの神経科学的側面を調査しています。
fMRIを使用して、ソーシャルローフィングが発生するときに活性化する脳の領域を
特定しました。結果は、ソーシャルローフィングが発生するときには、
報酬系と関連する脳の領域が活性化し、個々の努力を減らす動機付けが
生じることを示しています。
◆これらの研究を基にソーシャルローフィングを解説すると
ソーシャルローフィングとは、グループで働くときに個々の人が自分の努力を
減らす傾向のことを指します。例えば、チームプロジェクトで、あなたが他の
メンバーが頑張っているのを見て、自分の仕事を少し手抜きすることを考えて
みてください。それがソーシャルローフィングの一例ということです。
この現象は、個々の貢献が他の人によって認識されにくい場合や、他のメンバーが
十分に貢献していないと感じる場合によく見られます。
脳科学の観点から見ると、ソーシャルローフィングが発生するとき、私たちの脳の
報酬系が活性化し、これが努力を減らす動機付けを生み出します。
したがって、ソーシャルローフィングを防ぐためには、個々の貢献を明確にする、
または個々の努力がグループの成功にどのように影響するかを強調することが有効です。
第2章:最新の研究論文とレポート
以下に、ソーシャルローフィングに関する最新の研究論文とレポートを紹介します。
- “Social Loafing Among Members of Undergraduate Software Engineering Groups: Persistence
of Perception Seven Years After”
(Reginald Neil C. Recario, Marie Betel B. de Robles, Kristine Elaine P. Bautista,
Jaderick P. Pabico, 2015)
この研究では、ソフトウェアエンジニアリングの学生グループにおけるソーシャルローフィング
の存在と持続性について調査しています。結果として、タスクの可視性が
ソーシャルローフィングと負の関係にあり、一方で貢献、支配、攻撃性、そして
「ダマされることへの恐怖」(sucker effect)がソーシャルローフィングと正の関係に
あることが示されました。 - “Stimulative Training of Residual Networks: A Social Psychology Perspective
of Loafing”(Peng Ye, Shengji Tang, Baopu Li, Tao Chen, Wanli Ouyang, 2022)
この論文では、深層学習の分野でのソーシャルローフィングの影響について調査
しています。著者らは、ソーシャルローフィングが深層学習モデルの訓練にどのように
影響を与えるかを調査し、新たな訓練戦略を提案しています。
第3章:エンジニアや、経営者の活用アイディア
ソーシャルローフィングの理解は、エンジニアや経営者がチームの生産性を向上
させるための重要なツールとなり得ます。たとえば、
ソフトウェアエンジニアリングのチームでは、各メンバーの貢献を明確にすることで
ソーシャルローフィングを減らすことができます。
これは、コードレビューのプロセスを通じて、各メンバーの作業を他のチームメンバー
に可視化することで達成できます。
また、経営者は、ソーシャルローフィングを防ぐために、個々の努力がチームの成功に
どのように影響するかを強調することができます。これは、
定期的なフィードバックセッションを通じて、各メンバーの貢献を認識し、
評価することで達成できます。
第4章:アスリートや、日常生活での活用
ソーシャルローフィングの理解は、アスリートや日常生活でも役立ちます。
たとえば、スポーツチームでは、各選手が自分のパフォーマンスを最大限に
引き出すために、ソーシャルローフィングを防ぐ戦略が必要です。
これは、各選手の貢献を明確にすることで達成できます。
また、日常生活では、家庭内のタスク分担や友人とのグループ作業など、
ソーシャルローフィングが発生しやすい状況を理解し、
適切な対策を講じることができます。
第5章:注意点
ソーシャルローフィングの発生は、チームの生産性を低下させます。
したがって、これを防ぐための戦略を考えることが重要となるのです。
❶ソーシャルローフィングは、個々の貢献が他の人によって認識されにくい状況で
おきる現象で、メンバー間の信頼が損なわれ、チームワークが低下します。
❷個々のメンバーが自分の責任を他のメンバーに押し付ける、という形で現れることもあります。
したがって、
◆個々の貢献や責任を明確にすること、または
◆個々の努力がグループの成功に、どのように影響するかを強調する
ことが、ソーシャルローフィングを防ぐための有効な戦略となるのです。
ソーシャルローフィングは、適切な理解と対策を行うことで、
この問題を克服することが可能であり、チーム力を強化していく
きっかけとなる事にもなるのです。