心理学メンタルコーチング・武士道に学ぶ5つの軸と8つの習慣

思い出した瞬間、回数が記憶に残る、何度消えても大丈夫(想起誘発性忘却RIF)

【第1章】なぜ今、この悩みが増えているのか

会議の最中、ある発言だけは鮮明に覚えている。
でも、肝心の「次に何をするか」が抜け落ちる。

新人時代みたいに、同じ説明を何度も聞き直す。
帰り道で、「またやった」と胸が冷たくなる。

似た悩みは、相談サイトでもよく見かけます。
「会議の話が音にしか聞こえない」という声もあります。
「言われたことをすぐ忘れて自信がなくなる」という声もあります。

ここで、まず大事な前提を置かせてください。
それは怠けでも、根性不足でもありません。

私たちの脳は、情報が多いほど「取捨選択」をします。
そして、その取捨選択は、ときに残酷に見える。

たとえば、ひとつを強く思い出すとき。
関連する別の記憶が、いったん引っ込みやすくなる。

この現象が、想起誘発性忘却(RIF)です。
1994年に、Michael C. AndersonRobert A. Bjork / Elizabeth L. Bjork
らが、想起が関連記憶の成績を下げうることを示しました。

高校生向けに、たとえで言うならこうです。
記憶は「本棚」ではなく、検索窓のある巨大な倉庫です。

検索窓で「これ」を強く探すと、周辺の候補は一度黙る。
黙ってくれるから、いま必要な答えに焦点が合う。

つまりRIFは、あなたを困らせるだけの欠陥ではない。
脳が「目の前の課題」を通すための、静かな制御でもあります。

でも現代は、検索窓に入れる要求が多すぎます。
会議、チャット、資料、家事、連絡、締切、予定。

脳は毎分、優先順位を更新し続けます。
そのたびに「抑えるべき関連記憶」も増えていく。

だから今、忘れ方が“あなたの人柄”に見えてしまう
ここが、いちばんつらいところだと思います。

記憶が抜けるのは、脳が「今」を守っている証拠。
だから記憶したいものは、
薄く何度も、楽しんで、触れるだけです。

もし最近、急に激しく悪化したり、日常が崩れるほどなら。
不安を一人で抱えず、相談すると気が楽になります。

ここまでを、チャレンジしている自分にOKを出す
必ず触れただけ、記憶が濃くなっています、

あなたは、脳が、過密運転なだけかもしれません、
力みすぎて、エンジンが空まわり状態なのかもしれません。

気負い、力みをぬくには・・・逆に、
肩の力をいったん入れて、バッと、抜くのです。

【第2章】心理学的に何が起きているのか(理解)

今回とりあげた 想起誘発性忘却(RIF) は、「思い出す行為」そのものが、
記憶を選択して、思い出す回路を強化しているのです。

まず、ここを安心材料として置きます。
RIFは“記憶が壊れた”のでなく、“検索装置の精度を向上させている


1) 代表的な研究者・分野・研究機関

RIFは、記憶心理学の中でも
長期記憶の検索(想起)と、抑制(制御) を扱う研究領域です。

代表的なのが、次の古典研究です。

  • Michael C. Anderson / Robert A. Bjork / Elizabeth L. Bjork

  • 分野:認知心理学(記憶検索・干渉・抑制)

  • 機関:UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)心理学部
    彼らは「思い出す練習」中は、関連項目の成績が下がることもあると示しました。

そして、議論を大きく前に進めたのがメタ分析です。

  • Kou Murayama(University of Reading)

  • Toshiya Miyatsu(Washington University in St. Louis 心理学)

  • Dorothy Buchli(UCLA 心理学)

  • Benjamin C. Storm(UC Santa Cruz 心理学)

  • 分野:認知心理学(忘却メカニズムの統合)
    RIF研究を大量に集め、理論のどこが強いかを検討しました。


2) 高校生にもわかる「RIFの仕組み」

記憶は、押し入れの箱のように
順番に取り出すものではありません。

むしろ、脳は「検索窓」で探します。
検索窓に打ち込んだ言葉が、照明のスイッチになります。

ひとつを強く思い出すとき。
脳は、その周辺の“候補たち”を同時に呼び出します。

この候補が多いほど、頭の中は混線します。
そこで脳は、混線をほどくために“静かに整理”します。

その整理が、RIFの核です。
いま思い出したい記憶の邪魔をする関連記憶を、いったん抑える。

だから、会議で「A案」だけを何度も思い出すと、
同じ引き出しにある「B案」が出にくくなることが起きます。

育児でも似ています。
「明日の持ち物」だけを必死に繰り返すと、
「今日の連絡事項」が抜ける、みたいに。


3) 実験ではどう確かめるのか(超シンプル版)

RIFは、よく次の形で確かめられます。

  1. まず、カテゴリと単語を覚える(例:果物―オレンジ)。

  2. そのうち一部だけ、思い出す練習をする。

  3. あとで全部テストすると、かたまりとして記憶されやすい。

  • 練習したもの:よく思い出せる(メリット)

  • 練習してないが“同じカテゴリ”のもの:思い出しにくい(コスト)

ここがポイントです。
思い出す練習は、強化と抑制を同時に起こしうる。


4) 「抑制」なのか?「負けただけ」なのか?

RIFには、大きく2つの説明が競っています。

  • 抑制説(inhibition):邪魔な候補を能動的に弱める

  • 非抑制説(blocking/competition):強くなった記憶が道を塞ぐ

メタ分析では、全体としては
抑制説を支持する結果が多い一方で、
測り方や条件で揺れる点も報告されています。

つまり現時点の誠実な言い方は、こうです。
RIFは頑丈な現象だが、仕組みは一枚岩ではない。


5) 脳の中では何が関わるのか(やさしく)

「抑える力」は、意志の根性ではなく、
脳の制御ネットワークの働きに近いです。

たとえば、イタリアの University of Padua の研究では、
右の背外側前頭前野(DLPFC)にtDCSを当てると、
RIFの出方が変わることが示されています。

ここから言えるのは、断定ではなく推論として、
RIFは“前頭前野の制御”と関係が深い可能性が高いということです。


ここまでを、今日の言葉に翻訳します。
忘れたのは、あなたの能力は関係ない。
脳が、いま必要な一本にピントを合わせただけかもしれない。

次は【第3章】で、RIFの「最新研究(論文)」を3本だけ厳選し、
あなたの日常に接続できる形で要約します。

 

【第3章】最新研究(論文)紹介

ここでは、2024〜2026年の研究から、
日常に接続しやすい3本だけを厳選します。

読みながら、心の中でこう呟ければ十分です。
「忘れ方にも、記憶の仕方にも、ちゃんと仕組みがあるんだ」


研究①(2026)「順番の記憶」は、RIFだけが原因じゃない

Kobayashi, Ueno, Kawaguchi(2026)Memory & Cognition
発表元:山形大学/東京女子大学/名古屋大学

この研究は、4つの事前登録実験で、
「順番の記憶(手順・並び)」を検証しました。

結果が、かなり示唆的でした。
一部を思い出す練習をすると、いったん順番が乱れます。

でも同じくらい、ただ再提示しただけでも乱れました。
つまり、忘却が「想起そのもの」特有とは限らない。

この発見がくれる再定義は、こうです。
抜けるのは“抑制”だけでなく、“保持の混雑”でも起きる。
おきてもいい。

仕事の手順が飛ぶ人は、能力不足ではありません。
頭の中の「同時接続」が多すぎるだけかもしれません。

  • 今日の実装ヒント:手順は「頭」ではなく「紙」に置く

  • 順番タスクほど、チェックリストが最強の味方になります

DOI:10.3758/s13421-025-01825-7


研究②(2025)RIFは「痛みの記憶」をやわらげる可能性がある

Wauters ほか(Eur J Pain, 2025)ランダム化比較試験
発表元:ゲント大学/ブリュッセル自由大学/マーストリヒト大学/カルガリー大学

対象は9〜16歳の健康な子ども128名。
過去の痛い出来事を思い出す課題で、RIFを誘発します。

RIF群は、痛みの記憶の「ネガ要素」が思い出しにくくなり、
別の痛み課題での恐怖がより下がりました。

さらに2週間後、次の痛みへの恐怖予測も低めでした。
著者らは、RIFベース介入の可能性を示唆しています。

ここでの大事な再定義は、こうです。
記憶は「消す」より、「語り直し」で形が変わりうる。
だから、、、
リラックスしながら、何度も薄く、記憶にすりこんでいく!

大人にも、そのまま応用できる部分があります。
ただし、無理にポジティブ強要は逆効果です。

  • 今日の実装ヒント:「良かった点を1つ」だけ具体化する

  • 例:助けてくれた人/終わった後の安堵/学べた一手、感謝ができることを探す。

  • マイナスな記憶は何度もすりこまない、

DOI:10.1002/ejp.4758


研究③(2024)脳は「抑える回路」を使って、検索を整えている

Khan ほか(The Journal of Neuroscience, 2024)
発表元:香港中文大学(CUHK)/ケンブリッジ大学 MRC CBU

この研究は、tDCSで**内側前頭前野(mPFC)**を刺激し、
RIFがどう変わるかをランダム化で検証しました。

結果は、刺激により「競合する記憶」の正答が上がり、
RIFが減る方向に動きました。

さらにEEG指標として、左DLPFCなどの活動変化が関連。
著者らは、mPFCの因果的関与を示す結果だと述べます。

ここからの静かな学びは、これです。
忘れやすさは、意志より「制御資源」の状態に左右される。

だから疲れている日に、記憶の抜けが増えても自然です。
その日は、あなたの価値が下がったわけじゃない。

  • 今日の実装ヒント:「思い出したい物」を2つの手がかりで呼ぶ

  • 例:人名→部署+案件名、予定→場所+相手、の二重化

  • 物語りを、自然に記憶できるのは、リラックスして楽しんでいるから。

DOI:10.1523/JNEUROSCI.0189-24.2024


引用されやすい核心フレーズを、ここで更新します。
記憶は“容量”ではなく、“検索の整流”で守られている。

次の【第4章】では、東洋哲学がこの現象をどう見たか。
禅や武士道の言葉を、現代語に翻訳してつなぎます。

 

【第4章】東洋哲学はどう捉えていたか(意味)

東洋の古典は、ときどき静かに言います。
「忘れるのは、失うことだけではない」と。

RIFを知った今なら、その言葉が少し現代的に響きます。
思い出すほど、別の記憶が引っ込むのもまた自然です。

ここでは、禅と武道の視点で“超訳”してみます。
正解探しではなく、呼吸が深くなる読み方で。


1) 荘子「魚を得て筌を忘る」──記憶は“道具”でもある

『荘子』外物篇に、こんな譬えがあります。
「魚を得て筌を忘る」

魚を取ったら、筌は役目を終える。
大事なのは筌ではなく、取れた魚のほうです。

これを現代語に直すなら、こうなります。
詳細は道具で、要点は目的、ということ。

RIFに苦しむ人は、真面目で誠実な人が多いです。
だから、筌まで抱えて泳ぎたくなる。

でも脳は、要点を通すために枝葉を抑える。
その働きが、RIFとして表に出ることもあります。

「忘れた」ではなく、「役割を変えた」。
この言い換えだけで、肩が少し軽くなります。


2) 沢庵「不動智」──心は動かし、執着だけを止めない

沢庵宗彭の『不動智神妙録』は、剣の達人に宛てた書です。
剣禅一如の文脈で、心の置き所を説いたとされます。

紹介文ですが要点は明快です。
心は自由に動きつつ、一つに“とらわれない”のが不動智。

これをRIFの言葉に置き換えると、こうです。
一点集中が長すぎると、周辺の記憶は沈みやすい。

だから東洋は、集中そのものを否定しません。
ただ、集中を「固着」にしない工夫を重んじます。

思い出そうと拳を握りしめるほど、手がこわばる。
いったん指をゆるめた方が、掴めることがある。

その“ゆるめ方”を、禅は技術として育ててきました。
精神論ではなく、扱い方の練習としてです。


3) 武道の「残心」──終わっても、視野を閉じない

武道には 残心 という言葉があります。
動作のあとも緊張を保ち、反撃に備える心構えです。

これを日常に翻訳すると、こうなります。
結論に飛びついて、視野を閉じない。

会議で「Aだけ」を掴んだ瞬間に安心すると、
BやCがRIFで沈みやすくなることがあります。

残心とは、記憶で言えば「広い検索窓」を保つ態度。
一点の答えより、周辺の手がかりも残しておく。

さらに武道の 無心 は、空っぽではありません。
雑音に呑まれず、必要に応じて働く心の状態です。

RIFに悩む人ほど、この方向が救いになります。
頑張って掘るより、出てくる流れを整える。


同じ旅の仲間として、ここに一行だけ残します。
記憶は「保管」ではなく、「運用」の技術。

 

【第5章】まとめ(希望の余韻)

ここまで読んでくれたあなたは、もう知っています。
忘れやすさは、人格ではなく仕組みの揺れだということ。

想起誘発性忘却(RIF) は、
ひとつを取り出すために、周辺を一時的に黙らせる働きです。

だから、真面目な人ほど起きやすい。
強く思い出そうとするほど、抑制も強く働くからです。

東洋はこれを、責める材料にしません。
「筌を忘る」という言葉で、道具を手放す勇気を示しました。

そして武道は、視野を閉じない「残心」を教えました。

ここから先は、あなたの生活に合う形でいい。
5分でできる“小さな行動”を3つだけ置きます。


行動①:30秒の「二重手がかり」メモ

頭で覚えるのを、やめなくていいです。
ただ、検索窓を2個にするだけです。

  • 人名 → 「部署+案件」

  • 約束 → 「場所+相手」

  • 依頼 → 「目的+締切」

これだけで、RIFで沈んだ記憶が戻りやすくなります。
脳が別ルートで検索できるからです。


行動②:思い出したら「周辺を1つだけ拾う」

会議なら、結論だけで終えない。
周辺情報を1つだけ付け足します。

例:
「Aで決定」+「なぜそうなったか、理由を一語」
「明日提出」+「誰に渡すか、宛先を一語」

残心の現代版です。
視野を閉じないだけで、抜けが減ります。


行動③:思い出せないときは「掘らない」休憩を入れる

記憶が出ないとき、力技は逆効果になりがちです。
抑制が強まって、余計に沈むことがあるからです。

やることは簡単です。
20秒だけ、視線を遠くに置いて呼吸を2回。

そのあとに「別の手がかり」で再検索します。
掘るのではなく、流れを変える。


ここで、もう一度だけ核心フレーズを。
思い出せるのに抜けるのは、脳が「今」を守っている証拠。

あなたは、壊れていません。
過密な毎日に、脳が最適化をかけているだけです。

最後に、次に知りたくなる問いを置きます。
「あなたの記憶が一番抜けるのは、または
記憶に残っている時は、どんな“状況の型”のときですか?」

 

本記事は、最新の心理学的知見と東洋哲学(禅・武士道)を統合した
『Psycho-Bushido』スタイルで超解釈をもって執筆されています。



 

 

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