心理学メンタルコーチング・武士道に学ぶ5つの軸と8つの習慣

JOMO(参加しない喜び)心の余白を取り戻す|「抜ける勇気」を禅的に育てる

第1章 なぜ今、この悩みが増えているのか

誘いの通知が鳴っただけで、胸が少し急ぐ。
「行きたくない」より先に、「断ったら悪い」が出る。
そのまま予定を入れて、帰り道でどっと疲れる。
こういう日が、なぜか増えていませんか。

職場の飲み会、仲間内の集まり、オンラインのイベント。
どれも大切に見えるのに、全部は抱えきれない。
それでも断ると、置いていかれそうで怖くなる。
この感覚は、あなたの性格の弱さではありません。

背景にあるのは、暮らしの「常時接続」です。
SNSは、友だちの近況だけでなく、成功や楽しさも流します。
人はそれを見ると、無意識に自分と比べてしまう。
そして「今ここ」より「どこか別の場所」が輝いて見える。
この流れが、取り残される不安=FOMOを育てやすい。

だから最近は、逆方向の言葉が必要になりました。
それが JOMO(Joy of Missing Out) です。
「あえて参加しない」ことで、心の余裕と充足を味わう感覚。
取り残されることを、損ではなく回復として扱う視点です。

たとえば、こんな小さな場面。
誘いを断った夜、静かな部屋で湯気の立つお茶を飲む。
連絡を返さない数時間で、呼吸が深くなる。
“誰かに遅れる恐れ” が薄れ、体が戻ってくる。
JOMOは、孤立の美化ではなく、過密からの避難です。

大事なのは、ここから先の話です。
「参加しない」を選ぶと、なぜ満ちることがあるのか。
その心のメカニズムを、心理学で丁寧にほどきます。

第2章 心理学的に何が起きているのか

JOMOは、ただの「不参加」ではありません。
心の中で起きる3つの反応が、静かに切り替わります。


1)比べる脳が落ち着く:社会的比較理論

人は、基準が曖昧なときほど他人を見ます。
「私は足りている?」を、周囲で測るからです。

この仕組みを整理したのが、
社会心理学者レオン・フェスティンガーです。
(社会的比較理論/1954年)

SNSや誘いの多い環境では、比較の材料が過剰です。
すると、心が“採点モード”から戻れなくなります。
参加しない選択は、採点表をそっと閉じる行為です。

高校生向けに言うと、こうです。
「他人の答案を見続けると、自分の答えが揺れる」。
JOMOは、答案を自分の机に戻す感覚です。


2)「自分で決めた感」が満ちる:自己決定理論

JOMOで大事なのは、自分で選んだという手触りです。
ここを支えるのが、自己決定理論(SDT)です。

提唱したのは、心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアン。
研究分野は動機づけ心理学で、
米国ロチェスター大学の心理学部門に所属していました。

SDTは、人が元気でいるには
自律性・有能感・関係性の3つが要ると考えます。
(自律性=自分で選べている感覚、のことです。)

ここでFOMO研究がつながります。
FoMO尺度を作り検証したのは、
アンドリュー・プリジビルスキらの研究チームです。
(心理学/エセックス大学・UCLA・ロチェスター大学)

彼らは、基本的欲求の満たされにくさがあると、
FoMOが高まりやすい関連を示しました。

だからJOMOは、こう定義し直せます。
「他人の予定に乗る」から、
「自分の価値に沿って選ぶ」へ戻る動きです。

参加しないは、逃げではなく回復の選択。


3)心が回復する:心理的デタッチメント

参加しない夜に、呼吸が深くなることがあります。
これは気合いではなく、回復の科学で説明できます。

産業・組織心理学の領域で、
ザビーネ・ゾンネンタークは
「心理的デタッチメント(仕事から心を切り離す)」を
回復の中核として扱ってきました。
所属はドイツ・マンハイム大学の心理学部門です。

デタッチメントは、
頭の中の“勤務中タブ”を閉じるようなものです。
タブが閉じると、脳の熱が下がりやすくなります。
JOMOは、この仕組みを人間関係にも応用した形です。


4)注意点:JOMOには「二つの顔」がある

ここは大切なので、丁寧に置きます。
JOMOはいつも万能の良薬ではありません。

ワシントン州立大学(WSU)主導の研究報告では、
JOMOが高い人に社会不安が併存する可能性も示されています。

つまり、
「価値に沿って休むJOMO」と、
「怖さから避ける不参加」が混ざることがある。

見分ける合図は、感情です。
不参加のあとに、胸が広がるなら回復寄り。
不参加のあとに、胸が縮むなら防衛寄り。
どちらでも、あなたは守ろうとしているだけです。


次の第3章では、JOMOに関する最新研究(論文)を2本まで紹介し、
「何が心を楽にし、何が逆に苦しくするのか」を
もう一段、クリアにしていきます。

第3章 最新研究(論文)紹介

JOMOは「気分のいい標語」ではありません。
近年は、測って確かめる研究が増えています。
ここでは、直近の代表的な論文を2本だけ紹介します。


論文1:FoMOとJOMOは同居しうる(2025)

研究者:Maya Kalman Halevi/Rony Tutian/Yehuda Peled
分野:デジタル・ウェルビーイング/メディア心理学
発表Computers in Human Behavior Reports(2025年12月)
研究機関:Western Galilee College(イスラエル)など

この研究は、イスラエルの成人2,058名の調査です。
FoMO(取り残され不安)とJoMO(不参加の充足)を同時に測り、
4つの「人のタイプ」を統計的に分けました。

ポイントは、結果が“白黒”ではないことです。
低FoMO×高JOMOの群が、依存が最も低く幸福が高い。
そして意外にも、高FoMO×高JOMOは、
高FoMO×低JOMOより状態が良い傾向が出ました。

つまりJOMOは、FoMOを「消す薬」ではなく、
FoMOの悪影響をやわらげるクッションになりうる。
ここが、実務的にはいちばん大きい示唆です。

簡易要約(読者向け翻訳)

  • 「不安がある日」でも、JOMOの回路は育てられる。

  • “参加する/しない”の二択ではなく、調整力の話。

  • JOMOは、スマホ依存のリスクを下げる側に働きうる。

注意点
この研究は横断調査で、因果は断定できません。
ただ「組み合わせで差が出る」ことは、かなり実用的です。


論文2:JOMOは「孤独と苦しさ」を経由して効く(2025)

研究者:Adem Kantar/İlhan Yalçın/Oya Onat Kocabıyık/Christopher Barry
分野:臨床・健康心理/デジタル依存/測定(尺度)研究
発表Psychological Reports(2025年、オンライン先行)
研究機関

  • Erzurum Technical University(心理学科)

  • Ankara University(ガイダンス&心理カウンセリング)

  • Tekirdağ Namık Kemal University(心理学科)

  • Washington State University(心理学科)

この研究は、トルコの29州から932名を集めています。
まずJOMO尺度の信頼性を、CFA・不変性・IRTで検討。
その上で、JOMOとSNS依存の関係をモデル化しました。

結果は、JOMOが高いほどSNS依存が低い傾向でした。
ただし、それは“根性で離れる”からではありません。
孤独感の低下心理的苦痛の低下を介していました。

ここが、とても優しいポイントです。
JOMOは「我慢」ではなく、
心のつらさを減らすことで、結果的に手放しやすくなる。

簡易要約(読者向け翻訳)

  • JOMOは「孤独の穴」を埋める方向に働きうる。

  • 苦痛が下がると、SNSにしがみつく必要が減りやすい。

  • “参加しない=切る”より、満たす=離れるが近い。

注意点
これも横断調査なので、方向性は今後の課題です。
ただ、介在要因が明確なのは大きな前進です。


第3章の結論:JOMOは「抜ける技術」ではなく「満たす技術」

2本を合わせると、輪郭がはっきりします。
JOMOは、予定を減らす技術ではありません。
心の空腹を見つけて、先に満たす技術です。

だから、参加しない日はこう考えていい。
「孤独を減らし、苦痛を下げるための休養日」だと。

第4章 東洋哲学はどう捉えていたか(意味)

JOMOを東洋の言葉で言い直すなら、
「欠席」ではなく、中心に戻るという技術です。
逃げるためではなく、乱れないために一歩退く。
その発想は、古典の中にすでに息をしています。


1)『菜根譚』は「忙しさの中で、閑を盗め」と言った

明代の随筆『菜根譚』には、こんな趣旨があります。
「忙しい中で閑を盗むには、閑な時にコツを掴め」
騒がしい中で静けさを取るには、静かな時に根を立てよ。
そうでないと、環境に流され、時に靡きやすい。

これは、JOMOの核心に近いです。
参加しない喜びは、突然は生まれにくい。
普段の“閑”の時間に、心の足場を作っておく。
そうすると、誘いが来ても、選べる余白が残ります。

さらに別の箇所で、こうも言います。
「閑な時こそ張り、忙しい時こそ悠々と」
外の速度に合わせず、自分の呼吸を守れという含意です。

JOMOは「休む」より先に、
**“忙しさに飲まれない設計”**の話だと分かります。


2)『論語』は「和するが、同調しない」と教えた

孔子の『論語』に、短く強い一行があります。
「君子は和して同ぜず」
人と調和はするが、むやみに同調はしない。

ここでいう「和」は、関係を壊さない知恵です。
「同」は、流れに飲まれて自分を失う危うさです。
つまり古典は、こう勧めています。
仲良くしていい、でも自分を売らなくていい。

そして、もう一つ有名な言葉。
「過ぎたるは猶お及ばざるがごとし」
やり過ぎは、足りないのと同じくらいズレる。

参加のし過ぎは、善意でも心を摩耗させます。
JOMOは「ちょうどよさ」を取り戻す儒の実践です。


3)禅は「喫茶去」と言って、今ここへ戻した

禅語に **「喫茶去(きっさこ)」**があります。
意味は乱暴に言えば、「まあお茶でも飲みなさい」。
過去や他人の物語から、今ここへ戻す合図です。

JOMOも同じ構造を持っています。
“行くべきだったかも”の反芻が始まったとき。
「喫茶去」と、体を現在に戻す。
不参加は、世界を拒むのではなく、現在を選ぶ。


4)武士道の背景にある禅は「心を止めるな」と言った

武の世界では、心が一点に貼り付くと負けます。
この感覚を言葉にした古典が、沢庵宗彭の
『不動智神妙録』として知られています。

研究史の整理でも、沢庵と柳生宗矩の交流を通じて、
沢庵の心法論が示され、その影響を受け宗矩の
『兵法家伝書』(1632年)が成立した、という見立てが述べられます。

ここで言う「不動」は、石のように固まることではありません。
むしろ、何にも“止まらない”から自由という発想です。
JOMOでいえば、「参加すべき」に心を止めない。
止まらないから、関係も自分も、柔らかく保てます。


ここまでを、現代語で一行にします。
抜ける勇気は、怠けではなく、芯を守る技術。

第5章 まとめ(希望の余韻)

JOMOは、ただ「行かない」ことではありません。
「自分の中心へ戻る」ための小さな技術です。

比べる情報を減らすと、心は採点をやめます。
自分で選べた感覚は、静かな満足を作ります。
回復の鍵は、心を一度“切り離す”ことです。

そして最新研究は、こう告げています。
JOMOはFoMOと同居しても、支えになり得ます。
また孤独感や苦痛の低下を介して、依存を緩めます。

ただし、JOMOには「避ける不参加」も混じります。
不参加のあと、胸が縮むなら防衛のサインです。
その場合は、いきなりゼロにせず、薄く始めてOKです。

私たちは、同じ旅の仲間です。
抜ける日も、繋ぐ日も、どちらも人間らしい。


5分でできる「喫茶去JOMO」ワーク

① 30秒:体の合図を読む
誘いを見た瞬間、胸は広い? それとも狭い?

② 2分:守りたいものを一語にする
「睡眠」「家族」「回復」「静けさ」などで十分です。

③ 1分:代わりの満たしを一つ決める
お茶、風呂、散歩、ストレッチ、読書。小さくでOK。

④ 1分30秒:断り文を短く送る
・仕事向け:「本日は都合があり参加できません。次回ぜひ。」
・友人向け:「今日は休む日にするね。また別日に会おう。」

断る理由を“正当化”しなくていい。
あなたの回復は、説明を要しない大切な予定です。


引用されやすい核心フレーズ
抜ける勇気は、怠けではなく、芯を守る技術。

次に知りたくなる問い
「あなたが今週“参加しない”ことで守りたい、いちばん小さなものは何?」

本記事は、最新の心理学的知見、と東洋哲学(禅・武士道)を統合した
『Psycho-Bushido』スタイルで超解釈をもって執筆されています。

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