心理学メンタルコーチング・武士道に学ぶ5つの軸と8つの習慣

「やりがいはあるが、疲れる」正体はこれ◆最新【最強の幸福モデルPERMA+4】

目次

【第1章】なぜ今、この悩みが増えているのか


「充実しているはずなのに、なぜか苦しい」
 あなたは今、こんな矛盾を抱えていませんか?

仕事にはやりがいを感じている(Meaning)。
目標も達成しているし、評価もされている(Accomplishment)。
チームの人間関係も悪くはない(Relationships)。

「私は幸せなはずだ」 「恵まれているはずだ」でも・・・

そう自分に言い聞かせているのに、朝起きると体が鉛のように重い。 ふとした
瞬間に、「このままでいいのだろうか」という将来への
漠然とした経済的な不安がよぎる。

もしあなたがそう感じているなら、それは
あなたの「甘え」でも「努力不足」でもありません。

これまでの心理学や自己啓発は、少し「心」に偏りすぎていました。
「考え方次第で幸せになれる」「ワクワクすれば成功する」――。

確かにそれは素晴らしい真実ですが、私たち人間は、霞(かすみ)
を食べて生きているわけではありません。

「心(マインド)」だけ整えても、「土台(リアリティ)」が
 グラついていれば、建物は倒れます。

今、世界中のリーダーやビジネスパーソン、そしてアスリートの間で、
「精神論だけの幸福」から、 身体・環境・経済までを含めた、
◆泥臭くもリアルな幸福へと、 パラダイムシフトが起きています。

あなたが感じているその「違和感」こそが、 次のステージへ
進むための、正しいサインなのです。

日本でも「生活の質」を可視化しようという流れが強まっています。
内閣府が、GDPだけでなく満足度や生活の質を追う調査を続けています。

ここで効いてくるのが、PERMA+4という拡張の発想です。
個人の心だけでなく、組織や社会の条件まで視野に入れます。

ペンシルベニア大学のマーティン・セリグマンが示したPERMAです。
ポジティブ心理学の領域で、幸福を支える「要素」を整理しました。

そこに「+4」を足したのが、組織文脈でのPERMA+4です。
提案者は、クレアモント大学院大学のスチュワート・ドナルドソンらです。

+4は、身体健康・経済保障・環境・マインドセットの4つです。
◆職場のウェルビーイングには、この4つが外せないと整理されました。

たとえば、チームが仲良くても、睡眠が壊れたら崩れます。
やりがいがあっても、家計不安が強いと集中は途切れます。

空調や騒音や動線の小さなストレスも、毎日だと心を削ります。
「前向きに考えよう」だけでは、構造の痛みに追いつけません。

幸福は、気持ちや、気合いよりも・・・
この言葉を、ここからの軸に置いて進めます。

【第2章】心理学的に何が起きているのか(理解)


「アプリは最高なのに、スマホが動かない」
今、あなたの心と体で起きているのは、まさにこの状態です。

これまでの心理学(ポジティブ心理学)の主流は、
マーティン・セリグマン博士(ペンシルベニア大学)が提唱した
「PERMA(パーマ)」でした。 これは、

「喜び(Positive)」「没頭(Engagement)」「関係性(Relationships)」
「意味(Meaning)」「達成(Accomplishment)」の5つがあれば人は幸せになれる
、という理論です。

しかし、最新の研究で「これだけでは足りない」ことがわかってきました。 そこで、
スコット・I・ドナルドソン博士(クレアモント大学院大学)らが提唱したのが、こ
れに現実的な土台を加えた
『PERMA+4』です。

📱 「PERMA(パーマ)」を◆スマホに例えてみましょう

これまでの心理学(PERMA)は、
「どんなアプリを入れるか(楽しさややりがい)」ばかりを重視していました。

しかし、
もしあなたが今、疲れを感じているなら、それはアプリ(PERMA)
のせいではなく、以下の『+4(土台)』のどれかがエラーを起こしている
可能性があります。

1. Physical Health(◆身体的健康)=「バッテリー残量」

どれだけ楽しいアプリ(仕事)でも、バッテリー(睡眠・栄養・運動)が10%
を切っていたら動きません。気合いで充電は増えません。

・・・眠りが浅いだけで注意力と判断が落ちやすくなります。
睡眠不足が認知機能を下げるメタ分析も報告されています。
つまり、やる気の前に、脳の燃料が足りない状態です。

2. Mindset(◆マインドセット)=「最新OS」

「どうせ無理だ」という古いOS(思考の癖)のままだと、新しいアプリ(挑戦)
はフリーズします。「成長できる」という最新OS(グロース・マインドセット)
へのアップデートが必要です。

同じ失敗でも、「終わり」か「学び」かで回復速度が変わります。
この視点は、ドゥエック(スタンフォード大)の成長マインドセットが有名です。
個人だけでなく、組織の言葉づかいで“文化”として増幅します。

3. Environment(◆環境)=「Wi-Fi / 電波状況」

騒音、散らかった部屋、心理的安全性がない職場。これは電波が悪い場所で
動画を見ようとするようなものです。あなたの能力ではなく、場所が悪いのです。

騒音・暑さ寒さ・空気・動線などは、毎日少しずつ集中を削ります。
温熱環境が作業成績に影響するメタ分析も出ています。
だから環境改善は、気分転換ではなく生産性の土台です

4. Economic Security(◆経済的安定)=「ギガ数 / 通信料」

これがPERMA+4の最も画期的な点です。「お金の不安」は、常にバックグラウンド
でデータを大量消費します。ギガ不足(金銭的不安)の状態では、
心は常に速度制限がかかります。

「いつ仕事がなくなるかも」が頭にあると、脳は常に警戒します。
仕事の不安定さは、パフォーマンス低下と関連するメタ分析があります。
ここで起きるのは、怠けではなく“防衛モード”への切替です。


結論: あなたは「やる気」がないのではありません。 バッテリー(体)が切れ、
電波(環境)が悪く、ギガ(経済不安)を気にしながら、
重たいアプリ(仕事)を動かそうとしているだけなのです。
これなら、疲れて当たり前です。

 

組織で起きる「見えない連鎖」

PERMAが上がらない職場は、心が弱いわけではありません。
多くは、+4のどれかが欠けて、PERMAが育たない構造です。

睡眠が崩れると没頭が消え、達成も薄くなります。
不安定な雇用は関係性を競争に変え、意味が曇ります。

環境ストレスは小さいのに、毎日で大きな負債になります。
そして最後に「自分がダメだ」という物語が残りやすいのです。

ここでの再定義は、こうです。
「人が折れるのは、心ではなく土台が先に折れていた」

【第3章】最新研究(論文)紹介(最重要)

ここからは、PERMA+4が
「理想論」ではなく「測れて、設計できる」
ところまで来ている証拠を、3本だけ示します。


① 仕事の幸福を「個人→チーム→上司」で測った研究(2024)

Donaldson, S. I., Donaldson, S. I., McQuaid, M., Kern, M. L.(2024)
Systems-Informed PERMA+4: Measuring Well-being and Performance…
研究分野:組織心理学/測定(心理尺度)/システム科学
研究機関:Rutgers(RWJ Medical School)、Claremont Graduate University
、University of Melbourne(Centre for Wellbeing Science)

  • 国際サンプルの社員 N=2000 を調査。

  • PERMA+4を、個人・チーム・上司の3階層で
    それぞれ9項目に落とし込み、妥当性を検証。

  • 生活満足、PsyCap、職務パフォーマンス等と関連。

  • データと分析コードを公開し、再現性にも配慮。

要点
PERMA+4は「個人の気分」だけでなく、
チーム文化や上司の関わりとしても設計できる。

DOI:10.1007/s41042-024-00177-y


② PERMA+4を「短く・国際比較できる」9項目にした研究(2023)

Donaldson, S. I., Donaldson, S. I., McQuaid, M., Kern, M. L.(2023)
The PERMA+4 Short Scale: Cross-Cultural Validation Using IRT
研究分野:心理測定/項目反応理論(IRT)/職場ウェルビーイング
研究機関:USC(Keck School of Medicine)、
Claremont Graduate University、University of Melbourne

  • カナダ n=1,003、豪州 n=942 の社員データ。

  • IRTで、9項目でも十分な識別力を確認。

  • 長い尺度より、現場導入しやすい利点を提示。

要点
現場では「測る負担」そのものがストレスになります。
短い尺度は、組織の継続運用に効く武器になる。

DOI:10.1007/s41042-023-00110-9


③ PERMA+4の効果を「自己への優しさ」で説明した研究(2025)

Donaldson, S. I., Kern, M. L., Suchta, M., McQuaid, M., Donaldson, S. I.(2025)
The Power of Self-Compassion and PERMA+4: A Dual-Path Model…
研究分野:組織心理学/媒介分析/潜在プロファイル分析
研究機関:Rutgers(RWJ Medical School)、University of Melbourne、
The Good Foundry、Claremont Graduate University

  • フルタイム社員 N=576 のデータを分析。

  • PERMA+4が、PsyCapや感情的ウェルビーイング、
    離職意図や職務ストレスに関連することを確認。

  • そのつながりの一部を、セルフ・コンパッション
    (自分への思いやり)が媒介すると示した。

  • 「Flourishers/Strugglers」という2群の特徴も提示。

要点
組織の施策が効かない時、問題は意志ではなく、
自分を責める癖がブレーキになっている場合がある。

(PMCID:PMC12729756)


この3本が示すのは、
PERMA+4が「理念」ではなく、
測定→介入→階層設計に入ってきた、という事実です。

次は、東洋哲学がこの拡張をどう見るか。
「外側(環境・経済)まで心に含める」視点へ進みます。

 

【第4章】東洋哲学はどう捉えていたか(意味)

PERMA+4の面白さは、拡張というよりも、
「昔からあった全体像に戻った」感覚にあります。

東洋は、心を“頭の中”に閉じ込めません。
身体、暮らし、場の空気まで心の一部として扱います。

その意味でPERMA+4は、かなり東洋的です。
まず、その骨格になる古典を一つだけ置きます。

儒教の『大学』には、
**「修身・斉家・治国・平天下」**の流れが出ます。
自分を整えることが、家に伝わり、
組織や社会へ広がる、という設計思想です。

そして『大学』はさらに、
「根が乱れて、枝だけ整うことはない」と釘を刺します。
ここでの“根”は、精神論だけではありません。
身体や生活の基盤も含む、と読めます。

心は、暮らしと場の上に咲く。
これが、東洋側からのPERMA+4の要約です。


経済保障:孟子は「収入の安定が心を支える」と言った

『孟子』には、かなり直球な一節があります。
「有恒産者有恒心、無恒産者無恒心」

意訳すると、こうです。
「安定した生計がある人は、心も安定しやすい」。

逆に、生活が不安定だと、
人は“悪い人”になるのではなく、追い詰められます。

ここを踏まえると、組織への問いが変わります。
「やる気を上げる」より前に、
安心の土台を減らしていないか、を見ます。

給与だけではありません。
雇用の見通し、評価の透明性、急な変更の少なさ。
それらが、心拍と集中力を守る“政策”になります。


環境:東洋は「外からの負担」を“外邪”として扱った

江戸の養生書『養生訓』は、
身体を損なうものを「内」と「外」に分けます。

外側の負担として、風・寒・暑・湿を挙げ、
防ぐことを勧めています。

この発想を現代語に翻訳すると、こうです。
「集中を削る外部要因は、先に減らしていい」。

暑さ寒さ、騒音、照明、椅子、導線。
それらは“気合いで超えるもの”ではありません。

環境改善は、甘やかしではなく、
人が人として働ける条件の回復です。


身体健康:『養生訓』は「心気を養う」を最初に置いた

『養生訓』は冒頭近くで、こう言います。
「養生の術は先ず心気を養ふべし」

ここが深いのは、順番です。
やる気の前に、心気、つまり回復力を置きます。

さらに具体策が、とても現実的です。
食は半分の満足で止める、酒は微酔まで。
食後は歩き、同じ姿勢に居続けない。

現代の職場に直すなら、こうなります。
「休む設計」と「動ける設計」が健康施策です。
個人の根性ではなく、仕組みの話になります。


マインドセット:禅は「頑張って掴むと離れる」と言った

禅の公案集『無門関』の有名な問答があります。
趙州が「道とは何か」と問うと、
南泉は 「平常心是れ道」 と答えます。

さらに「向かおうとすれば乖く」と続きます。
意訳すると、こうです。
「良い状態を力んで掴むほど、ズレやすい」。

これは“努力否定”ではありません。
努力を、緊張と自己否定で汚さない工夫です。

組織で言うなら、
「前向きでいろ」を強制しない、という設計です。
淡々と整え、淡々と戻る文化が、回復を早めます。


PERMA側も、古典は“日常の力”として語っていた

『論語』の冒頭は、すでにPERMAです。
「学びて時に之を習ふ、亦説ばしからずや」
学び直しと小さな進歩が、前向き感情を生む。

そして、没頭の入口もこう言い切ります。
「知る者は好む者に如かず、好む者は楽しむ者に如かず」
知識より、好き。好きより、楽しみが深くする。

つまり、東洋も「心の栄養」を否定していません。
ただし、それを支える条件を先に整えるのです。

 

【第5章】まとめ(希望の余韻)

PERMA+4は、心を励ますモデルではありません。
人が折れない条件を、先に用意する設計図です。

前向き感情ややりがいは、才能ではありません。
健康・安心・場・言葉が揃うと、自然に戻ってきます。

引用されやすい核心フレーズ:
「幸福は、気合いよりも設計で増える。」

あなたは、同じ旅の仲間です。
整えるのが遅い日があっても、置いていきません。


5分以内でできる「失敗しにくい」小さな行動(順番つき)

組織でも個人でも、まずは「土台→花」の順が安全です。
一気に変えないで、一箇所だけ触ります。

① 身体健康:30秒の“呼吸の棚卸し”

椅子に深く座り、息を3回だけ数えます。
吸うより、吐く時間をほんの少し長くします。
脳へ「今は戦闘じゃない」と伝える合図になります。

② 経済保障:2分の“見通しメモ”

紙に、次の2行だけ書きます。
「今月、確定しているもの」
「まだ不確かなもの」
不安は“全部不確か”に見える時、最も増えます。
分けるだけで、警戒モードが少し緩みます。

③ 環境:3分の“1ストレス除去”

今いる場所で、気になるものを1つだけ減らします。
通知を切る、光を変える、椅子を直す、窓を少し開ける。
小さくても、毎日の摩擦が減れば回復が始まります。

④ マインドセット:30秒の“言葉の変更”

「自分はダメだ」を、こう言い換えます。
「今は条件が足りないだけだ」
責める言葉を、設計の言葉へ戻します。
努力をやめるのではなく、無駄な自己攻撃をやめます。


組織向け:会議で使える「PERMA+4の一問」だけ

会議の最後に、全員でこれを一回だけ共有します。
「今日の8要素のうち、一番薄かったのはどれ?

薄い要素を「誰のせい」にもしないのがルールです。
代わりに、次の一手を小さく決めます。
「薄かった要素に、明日5分だけ投資するなら何をする?」

それだけで、職場は“気合いの場”から“改善の場”になります。


余韻の結び

花が咲かない日があるのは、あなたの価値ではありません。
土が痩せ、風が強く、水が足りない日もあるからです。

PERMA+4は、心を叱らずに、条件を整える道具です。
そして整えた分だけ、人は静かに戻ってきます。

あなたの職場(または家庭)で、8要素のうち「一番見落とされている土台」は何でしょうか。

本記事は、最新の心理学的知見と東洋哲学(禅・武士道)を統合した
『Psycho-Bushido』スタイルで超解釈をもって執筆されています。

 
 

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